【酪農体験記】DOI FARM(静岡県富士宮市)

有機農家をめざしている僕ですが「農業を幅広く体験したい」という思いもあります。今回は、静岡県富士宮市の『DOI FARM』様のもとで酪農のお手伝いをするというご縁に恵まれました。この記事では、そこでの体験内容や感じたこと、考えたことをまとめてみました。

↑こんなに可愛らしい牛が100頭もいました!

酪農家の朝は早い

DOI FARMの一日のスケジュールは、大体次のような感じでした。一日の始まりは搾乳作業からです。その開始時刻は5時半と早く、慣れない早起き、慌ただしく始まる搾乳作業にてんやわんやでした。また、DOI FARMでは搾乳だけでなく、野菜栽培もされていたので、畑仕事のお手伝いもさせていただきました。

一日スケジュール
05:30 搾乳
08:00 朝食
09:00 休憩
10:00 畑作業
12:30 昼食&休憩
14:00 搾乳準備(牛寄せ、掃除など)
16:30 搾乳
19:00 夕食
20:00 自由時間、就寝

体を一日中動かして、クタクタになって眠りにつく。身体は確かに応えたものの、振り返ってみると気持ちのいい仕事ができたなあと思うのです。

牛たちと初対面、そして初めての搾乳作業!

僕は、搾乳経験がないどころか、牛たちをここまで間近で観察したことすらなく、牛たちを目の前にするだけで怯みました。

↑牛舎の中で思い思いの時間を過ごす牛たち。柵から顔を出して餌を食べたり、横たわって身体を休めたり。
↑牛は好奇心が強いのか、マジマジと見てきます。「見慣れない奴が来たな」

牛との初対面にアタフタしながらも、搾乳作業が始まります。次のような流れで搾乳は進んでいきます。

搾乳作業の流れ
  • その1
    牛に整列してもらう

    牛舎内に入り、牛たちに整列してもらいます。言うは易く行うは難しで、実際やってみると糞尿に足を取られ、牛舎内を歩くことすら難しいです。また、言うことを聞かぬ牛もいたりして、整列させるのに相当の時間を要しました。

  • その2
    搾乳場所(パーラー)への誘導

    柵を開けて、先頭の牛から搾乳場所へ誘導していきます。搾乳場所は計10箇所あるので、10頭ずつ誘導します。中には、我先にと行列の先頭へ躍り出てくる牛がいたりして面白かったです(搾乳されるのが好きなのか、早く終わらせたいのか・・・)。

  • その3
    いざ搾乳!

    と、その前に細かな手順がいくつかあります。「牛の固定(隙あらば逃走しようとするため)」→「乳房の消毒」→「手絞りでテスト(牛乳に異常がないかを確認)」→「搾乳機の装着」→「あとは自動で搾乳!」 
    1頭あたりの搾乳時間は、5分程だったと思います。

  • その4
    牛舎へ帰す

    搾乳が終わると、搾乳機が自動で外れる仕組みになっているので、乳房を再消毒して牛舎へ帰ってもらいます。心なしか牛たちも嬉しそう。お疲れ様!

DOI FARMには、100頭近くの牛がいました(搾乳する牛は80頭くらい)。全ての牛を毎日搾乳するのは、気が遠くなるほど大変なのですが、終わってみると心地よい充実感を覚えます。

搾乳作業中に思ったこと

怒涛のように搾乳場所へやってくる牛たち。そんな牛たちを相手に、てんてこ舞いになりながらも、黙々と作業しました。そんな中で、色々なことを思ったり、発見したりしました。

搾乳されながらも、牛は僕のことをジーッと見ている

搾乳作業は、牛の横にしゃがんで進めていきます。集中して作業をするので、牛の顔を眺める余裕はありませんでした。しかし、ふと目をやると、牛は僕のことをジーッと見ているのです。まるで、アタフタ作業している僕を品定めしているかのよう。なんだか悔しい気分になりながらも、ここでは牛の方が先輩ですものね!

とはいえ、搾乳作業は牛と協同作業という感じもあり、どこか楽しい気分でもありました。

↑「ああ、この作業者(筆者)は搾乳のこと全く分かってませんわ」
※この写真は、牛舎で食事中の牛さんです(搾乳中は撮影する余裕はありませんでした!)

危険と隣合わせの作業である

中には搾乳を嫌がる牛もいました。そういう牛は、搾乳作業中に後ろ足を上げて抵抗を見せたりします。基本的に、大人しい動物なので攻撃されているという感じはありませんが、自分の足を踏まれないように注意しなくてはいけません。雌牛の体重は600~700kgもあるらしいので、足を踏んづけられたらひとたまりもありません。危険を想定しながら作業する必要がありました。

また、搾乳中に尻尾(糞付き)を振ってくる牛がいて困りました。オーナーさん曰く、牛はイタズラ好きらしいので、茶化されていたのかも(完全に舐められているという意見も笑)。

↑「ちょっくら、からかってやるか」

牛の個性について

当然ですが、牛にも一頭ずつ個性がありました。表情や毛色などはもちろん、乳房の形や、その位置も様々なのです。驚くほど搾乳しやすい牛がいる一方で、悲しいほど搾乳しづらい牛がいるんです。そして、搾乳しづらい牛に限って、足を上げて嫌がってきたり、尻尾(糞尿付き)を振ってイタズラしてきたりするのです。そのような牛を搾乳する時は、ヒヤヒヤ急いで作業したものです。

とこ
とこ

頼むから大人しくしててくれよおお

大人しく応じてくれた牛には「君、大人しいねえ!」と声をかけ、尻尾でビンタを食らわせてくる牛には「すぐに終わらせますから!(虚勢)」という声をかけたり。なんやかんや、楽しく作業しました。

とこ
とこ

とにかく、思った通りには進まない!

↑真っ黒の牛、白黒の牛、中には茶色の牛なんかもいました。

酪農の動向について

お手伝いをさせていただく中で、酪農業界の動向を伺う機会もありました。ここからは、体験内容から少し話を変えて、酪農業界の動向について感じたことを書きたいと思います。

担い手不足は深刻

「担い手不足」という問題が一次産業で広く言われているように、酪農業界でも深刻な問題となっているようです。

土井さん<br>(注釈)
土井さん
(注釈)

DOI FARMでは、オーナー夫婦と、息子夫婦で経営しています。しかし、富士宮市には担い手がいないまま年齢を重ねていらっしゃる酪農家様も多いんです。

土井さんの「土(ど)」の漢字は、正確には「土」の右上に「、」と書きます。

このような問題は、日頃盛んに叫ばれているはずなのに、他人事として認識してしまっている自分に気付いたりもしました。日々、乳製品を口にしているというのに。「僕自身の生活」と「牛たち」との物理的距離、心理的距離が余りにも離れてしまっている。

しかし、たった数日間お手伝いをさせてもらうだけでも、「酪農家の担う大きな役割」を実感し、「牛たちの可愛らしさ」も体験できました。これからも「実際に体験する」という姿勢を大切にしようと気持ちを新たにしました。

酪農家さん、牛さん、いつもありがとう!

酪農×ロボット、酪農×ゲノム分析

昨今、AIやロボットによる自動化、はたまたゲノム分析といったキーワードを聞くことが多くなりましたが、酪農業界でもそのような技術が拡がっているようです。

人の手を全く必要としない、完全自動搾乳ロボットがあったり、子牛をゲノム分析することによって「乳量の多い牛に成長するか」を見分ける技術も発展しているようです。驚きです。最先端の技術が、酪農の問題や課題を解決してくれるのかもしれません。

ただ同時に、技術が発展しても、酪農家さんが抱いている「牛が大好きだ」という気持ちはずっと残り続けて欲しいなあとも思うのです。僕のわずかな搾乳経験だけでも、少なくとも数百回、牛たちと直接触れ合う機会があったはずです。そうやって牛と触れ合うたびに、愛着が増して気持ちが温かくなったり、丁寧に作業しようといった気持ちが強くなりました。酪農家さんであれば尚更だと思います。

今の自動化の波によって「牛との触れ合いが減ってしまい、さらには愛着をも減りはしないだろうか?」と心配になったりもします。

一番好きだった作業「餌寄せ」

再び酪農仕事の話に戻りたいと思います。

僕は搾乳作業ももちろん好きでしたが、「餌寄せ」という作業が一番好きでした。餌寄せとは、牛たちが食事しやすい場所に草を寄せる作業です。とにかく牛たちは、毎日恐ろしい量の草を食べます。

土井さん
土井さん

搾乳によって失われたエネルギーを補うため大量の餌を食べるんです。

ムシャムシャと草を食べていくうちに、牛から遠い草だけが残ってしまうのです(下の写真)。餌寄せ作業では、この残った草を牛たちが届く位置に寄せます!

↑「餌、寄せてくれない?」

作業にはプラスチック製のシャベルを使いました(下の写真)。このシャベルを使って草を移動させるのですが、これが中々の重労働です。特に雨の日などは、湿気で草が重くなり足腰に応えます。

↑真ん中の青いシャベルが作業のお供!

とはいえ、牛の生活を間近で眺められる時間でもあるので気に入っていました。

↑とにかく食べる。
↑みんなで食べる。
↑時々やってくる人間に興味津々。
↑昼下がりには、のどかな時間が流れる。

また、餌寄せしたいなあ。

まとめ

当然ですが、酪農仕事は肉体的に楽な仕事ではありませんでした。無理な姿勢での搾乳作業や、糞尿でぬかるむ牛舎での作業で、筋肉痛や腰痛になったりもしました。それに汚れますし臭いもします。牛たちは食事と排泄を同時にするなんてことも珍しくはありません。

「それでは、酪農仕事はもう懲り懲りなのか?」と言えば、全くそうではありません。むしろ、牛たちにまた会いに行きたいなと思います。牛たちの魅力は、酪農仕事の過酷さを上回るのだなと思えました。

次の写真を見て欲しいです。正面から撮影しつつ、「気の抜けた表情だなあ」と思いました。もちろん、可愛いです。

↑この牛はとても人懐っこかった。

もう一枚見て欲しいです。同じ牛の横顔です。撮影しながら僕は「同じ牛を撮っているのだろうか?」と疑うほど、その凛々しさに魅了されました。この嘘のない目を見ていると、僕の中の何かを見透かされているような気すらしてきます。

↑どこまでも嘘のない真っ直ぐな目。

可愛らしさと、格好良さの両方の表情を持つ牛たち。人懐っこくておっとりした性格。牧歌的な鳴き声。きっと、多くの酪農家さんたちも、こういった牛の魅力に取り憑かれて日々がんばっておられるのだろうなあと思うのです。

本当に僅かな期間でしたが、牛たちや酪農家さんたちとの距離を少し縮められたことが何より嬉しかったです。DOI FARMのみなさん、そして牛たちありがとうございました!

おまけ

DOI FARMは富士宮市にあり、目の前に富士山がそびえ立っていました。シャッターチャンスの連続。

↑見るものを沈黙させる力強さ。
↑用水路には富士山からの水が流れる。
↑牛たちも富士山が好きなのかな?
↑DOI FARMさん、お世話になりました!
↑牛舎全景。
↑畑仕事もお手伝いさせていただきました。
↑子牛もいました。
↑こんな景色を日頃から拝めるなんて、羨ましい!

最後までお読みくださり、ありがとうございました!

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